【卓球】上田仁が現役引退、戸上隼輔の専任コーチとして新たな挑戦へ
元日本代表の上田仁が現役を引退し、戸上隼輔の専任コーチとして新たな道を歩む。ドイツでの最後の試合を振り返り、今後の指導者としての意欲を語る。

2025年4月、元日本代表の上田仁(33歳)は、ドイツ・ブンデスリーガのプレーオフ準決勝を最後に現役を引退した。名門ボルシア・デュッセルドルフとの最終戦では2点を奪い、有終の美を飾った。今後は、戸上隼輔(井村屋グループ)の専任コーチとして指導の道を歩む。
上田は5月の世界選手権ドーハ大会ですでに戸上のベンチからアドバイスを送っており、戸上の活躍に大きく貢献したとされている。戸上は男子シングルスで張本智和(トヨタ自動車)に完勝し、準々決勝で惜しくも敗れたものの、メダルに近づいた。
上田は京都の一条クラブから青森山田中・高を経て青森大学へ進学。社会人では協和キリンでプレーし、全日本社会人で3連覇を果たした後、プロに転向。2023年からはドイツのケーニヒスホーフェンで中心選手として活躍してきた。
高校時代、上田は選手を引退して指導者になることも考えていたが、松下浩二氏に勝利し、全日本でベスト4に入ったことで選手としての道を選んだ。2018年にはプロ選手として独立したが、Tリーグでは出場機会に恵まれず、悩みも多かった。
ブンデスリーガでの経験は、今後の指導者としての視野を大きく広げた。日本のTリーグとドイツのリーグの違いについて、上田は「ブンデスリーガは掛け持ちが禁止されていて、その選手が何を優先しているのかがはっきりする。Tリーグは掛け持ちOKで、選手にとってはありがたい面もあるけど、方向性がチームとリーグでズレているように見える」と語る。
最終戦での2勝は「出来過ぎ」と本人も語るが、その裏には明確な準備と覚悟があった。4月27日のブンデスリーガでのラストマッチで2勝し、まだまだ選手としてやれる中での指導者への転向だった。
「これが最後の試合だと思ったら、良い意味で力が入ってくれた。勝つつもりではいたけれど、戦力的に厳しいのは分かっていたので、1点取れればと思っていた」と上田は振り返る。
選手としてはオリンピックに出場できなかったが、「だからこそ、そういう選手を育てたいというエネルギーはめちゃくちゃある」と語る。
「寂しさよりもやりがいのほうが大きいですね。スポーツマンとしての振る舞いもドイツで学びましたし、これからは自分の経験を若い世代に還元していきたい」と上田は意気込みを語った。
長年、卓球界を支えてきた上田仁は静かにラケットを置き、次なる舞台での活躍を誓っている。