【F1分析】角田裕毅のカナダGP戦略とペースの課題:1ストップ作戦の成否を検証
角田裕毅が2025年F1第10戦カナダGPで挑んだ1ストップ作戦の詳細と、その成否を分析。レースペースの課題と今後の改善点を探る。


2025年F1第10戦カナダGPにおいて、レッドブルの角田裕毅は18番グリッドからスタートし、12位でフィニッシュ。3戦連続でポイントを逃す結果となった。FP3で赤旗中に他車を抜いてしまったことにより、10グリッド降格のペナルティを科せられた角田。レギュレーションでは赤旗中に他車をオーバーテイクすることは許されていないが、角田が抜いたオスカー・ピアストリ(マクラーレン)は、赤旗中断の原因となり、マシンにダメージを負った状態で低速走行をしていた。角田とチームは、これは厳しい裁定だったと主張を続けている。
しかし、角田はペナルティを取り戻すために、決勝での追い上げを目指した。チームは、2ストップが主流となるであろうと言われる中、ハードタイヤを履いてスタートし、そのスティントを伸ばしに伸ばす1ストップで決勝レース70周を走り切ることを目指した。ポジションを6つ上げることには成功したものの、入賞には届かなかった。
では、角田はなぜ入賞に届かなかったのか?その理由を分析してみよう。
レッドブルのデグラデーションが大きい?
F1第10戦カナダGPのレースペース分析によると、角田は1ストップ戦略を成功させるため、スタート時に履いたハードタイヤでできるだけ長く走らねばならなかった。ミディアムタイヤのデグラデーションが、予想以上に大きかったからだ。
13周目以降のニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)のペースを見ると、ミディアムタイヤを履いてスタートしたが、14周目から一気にペースダウン。15周目、16周目と、どんどん遅くなっていった。いわゆる”崖”を迎えてしまったわけだ。レーシングブルズのアイザック・ハジャーやアルピーヌのフランコ・コラピントなどは、さらに早い段階で崖を迎えていた。
角田のチームメイトであるマックス・フェルスタッペンは、ペースこそ中団グループよりも断然速かったものの、5周ほど走った段階で崖を迎えていた。ここから逆算すると、レース終盤にはコース上にラバーが乗り、コンディションが良くなるとしても、15周以上走るのは難しい。そのため1ストップ作戦を成功させるならば、55周程度はハードタイヤで走っておかなければいけない……そんな状況であった。
オコンとサインツJr.の存在
角田にとって厄介な相手がふたりいた。それがハースのエステバン・オコンと、ウイリアムズのカルロス・サインツJr.だ。彼らもハードタイヤでスタートし、角田と同じように1ストップを目指していた。
しかもオコンとサインツJr.は、角田よりも良いペースで走っており、角田としてはなかなか追いつかない。そうこうしているうちに角田のペースは落ち始めていってしまった。
今後の課題
角田の1ストップ作戦は、ポジションを上げることに成功したものの、入賞には至らなかった。デグラデーションの大きさと、他ドライバーとのペース差が課題として浮き彫りになった。今後のレースでは、戦略の見直しとペースの維持が鍵となるだろう。