東京ヴェルディの育成戦略:ユースから大学経由でプロへと導く秘訣
東京ヴェルディの育成組織が、ユースから大学経由でプロ選手を育てる過程とその理由を探る。

東京ヴェルディの育成戦略
東京ヴェルディは、Jリーグ発足以前からプロで活躍する選手を次々と輩出してきた。その育成組織の秘密に迫るため、今回はユースから大学経由でトップチームに入る選手たちに焦点を当てる。
プロ選手になるためのポイント
プロ選手になるためには、メンタル、フィジカル、技術、戦術の総合点が重要だ。東京ヴェルディユース監督の小笠原資暁氏は、18歳の時点でこれらの条件をクリアすることは容易ではないと語る。
大学経由のトレンド
近年、日本では大学経由でのJリーグ入りがトレンドとなっている。三笘薫や守田英正など、大卒選手の活躍は日本代表でも目立っている。東京ヴェルディも例外ではなく、今季のトップチームには自前のアカデミーで育った選手が10人登録されているが、そのうち3人はユースから大学経由でのトップチーム入りである。
ユースから直接昇格 vs 大学経由
ユースチームから直接トップ昇格する選手と、大学を経由する選手の違いは何か。小笠原氏によれば、ユースチームに所属していた選手が大学へ進むケースは「3つぐらいのパターンに分かれる」という。
- もうプロは無理だから、大学へ行く選手
- 大学へ行ったら、プロになれそうな選手
- ユースからプロに上げてもいい。だけど、彼の場合は大学へ行かせたほうが、その後、選手としての伸びが来そうな選手
判断の難しさ
特に判断が難しいのは、最後のパターンだ。大学でプレーしたほうが選手として伸びるケースである。小笠原氏は、能力的にはプロに行けるが、ジュニアからずっとヴェルディで育ってきているため、外の世界を知らない選手には、大学で外を見せたほうが良いと指摘する。
大学での成長
大学へ進学した選手についても、東京ヴェルディはその動向を追い続ける。アカデミーのヘッドオブコーチングを務める中村忠氏によれば、大学へ行く選手も基本的にはプロになりたいと考えており、大学での結果を出している選手は練習参加に呼ぶこともあるという。
選手の気持ち次第
しかし、一度手放してしまえば、大学でプロになれる選手にまで成長したとしても、ヴェルディに戻ってきてくれる保証はない。小笠原氏は、心のどこかで戻ってきてくれるだろうと楽観的に思っているが、それはわからないと苦笑する。
指導者の役目
中村氏は、大学でメンタリティが変わった選手は他の要素も大きく変わると指摘する。もともとうまい選手がサッカーへの取り組み方から変われば、それは変わると語る。しかし、変わらない選手は変わらないため、もったいない選手もたくさんいる。それを変えられるかが指導者の役目だと強調する。
(文中敬称略/つづく)
浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki