65歳のラグビー挑戦者、吉野俊郎の情熱と戦略
65歳の吉野俊郎がラグビーへの情熱を語り、トップイーストリーグでの挑戦を続ける姿を紹介。

2025年、東日本地区トップイーストリーグCグループ(TE-C)で戦うワセダクラブTOP RUSHERS。8月16日、お盆休み中の午後4時半過ぎ、上井草の早稲田大ラグビー場に20代から60代までの社会人メンバー20人ほどが集まった。33度を超える蒸し暑いグラウンドで、タッチフットを延々と繰り返し、約1時間半走り続けた。
最年長はWTB吉野俊郎(愛称・よっさん)。1960年9月5日生まれ、もうすぐ65歳になる。黄色のTシャツを着たよっさんは、メンバーと同じく走り、アタックでは味方に優しいパスを出し、スペースがあれば抜きにかかる。ディフェンスでもコミュニケーションを取り、追いかける。Tシャツの背中には「AGE IS JUST THE NUMBER(年齢はただの数字)」とプリントされている。
よっさんは、今季もTE-Cで出場を目指す。現役であり続ける理由は一言、「もっとラグビーをうまくなりたい」。勤めるサントリー株式会社を9月末に定年退職になる。仕事場は市場開発本部専任部長。大手全国チェーンの居酒屋、ファミリーレストランなどにサントリーのアルコール飲料を卸す重要な部署だ。
「ビジネスマッチングが多いですね。M&A(企業買収)を含めて、企業と企業の間をとりもつ。M&Aまでいかないが業務提携とかを取りまとめる。うまくつながってもらう。結果、我々として両方とも良い会社になってもらいサントリーの商品をあつかってもらえればありがたい話になりますね」
もちろん仕事にラグビーは役立ってきた。「ラグビー経験者はコミュニケーションがある。『私もラグビーをしていました』とか。うまく話がすすむことが多いです」。
早大卒業後、創部間もないサントリーラグビー部を選ぶ。仕事と両立しながらの42年6か月。「楽しく仕事できたかなと思います。たまたまラグビーの調子と仕事の調子って両方良かったってこと無かったし、両方が悪かったってことも無かった。ラグビーの調子が良いときは仕事がぼちぼちだったし。逆もあったりで。人として生きていくのでバランスが取れていた」と話す。
よっさんがピッチに立つとチームに一つの戦略が生まれるらしい。それまでもメンバーはプランに沿って試合をしている。「吉野さんにトライさせないといけないって。他の14人は、私が入ると『何とかトライ取らせよう』と。すると筋が通ってくる。ストーリーも読みやすいですね。『そろそろ、こっちに折り返してくるなと』。あそこで一人、相手を引き付けてくれたら、俺、ノーマークだな。その通り、若者たちが動いてくれますよ。
言葉通りのシーンは7月27日の川越ファイターズとの練習試合(オーバー40)でも見ることができた。20分ハーフの後半10分過ぎ、よっさんが出場した。トライ後のゴールキック無しで、それまで2本ずつトライを決めて10-10の同点。ワセクラボールのラックからのボールをSHが素早くさばいて、FL平野航輝に渡り、平野がピッチ左側で待つ、よっさんへラストパス。試合を決めるトライとなり、試合後はMVPに選ばれた。