大学野球部の「幽霊部員」問題を解決するための方法とは?中京学院大監督が語る「会話」の重要性
中京学院大学硬式野球部では、過去に幽霊部員が多数存在していた。しかし、昨年から監督を務める小野昌彦氏は、選手との会話に力を入れ、幽霊部員をゼロにするための方法を模索している。


中京学院大・小野昌彦監督「種蒔き終わって蕾になった」
「『もうええわ』と切るのは簡単だし楽なんですけど、せっかく縁があってうちの野球部に入った選手たちには 4 年間野球を続けてほしい。練習に来なくなった選手に『そうですか、さようなら』とは言えません」
柔和な表情を浮かべながらも力強くそう語る小野は、一昨年まで 28 年間、東北福祉大学軟式野球部でコーチを務めた。コーチ就任当時の軟式野球部は硬式野球部を辞めた選手の「受け皿」のような存在だったため、部員約 140 人のうち 40 人ほどしか練習に参加していなかった。小野は実質監督業を担い、選手一人ひとりとの「会話」に注力。選手の目線に降りてコミュニケーションを取ることで幽霊部員を生き返らせた。
昨年から中京学院大を率いる小野監督
舞台は宮城県仙台市から岐阜県中津川市へ。中京学院大硬式野球部も約 100 人の部員を抱えており、やはり幽霊部員が多数いた。ここでも選手との会話にこだわったが、一筋縄ではいかない。「昔より聞く耳を持たない子が増えた印象です。聞いているふりをして会話の内容が頭に入っていない。かといって何回も同じことを言うと、『分かっているのにうるさいな』という態度が出てしまう」。約 30 年経てば大学生の性質も変わる。
それでも、しつこいほどに選手と向き合う姿勢は変えなかった。グラウンドではなるべく全員と話し、グラウンドで会えなければ大学の教室で声をかける。小野は「まだ戻れない子がいるのも事実ですが、それでも細かく会話をして、少しは解消されてきた。種蒔きが終わって蕾にはなったかなと思います」と手応えを口にする。就任 1 年目はリーグ戦で春秋ともに 7 チーム中 6 位と苦しんだ。ただ、確実に変化が現れた 1 年ではあった。