新横綱・大の里の故郷石川への想いと憧れの先輩三輪隼斗との絆
新横綱・大の里の故郷石川への想いと憧れの先輩三輪隼斗との絆を探る。二人の苦労と成長の物語。

大の里の故郷・石川への想い
昨年6月、大の里の初優勝祝賀会で記念撮影する三輪隼斗さん。新横綱・大の里は、史上最速の初土俵から所要13場所で昇進を果たした。石川県津幡町出身の中村泰輝(だいき)が、十数年で角界の頂点へ。故郷の石川、相撲留学した新潟、日体大で開花した東京のゆかりの人物との思い出話と交流から、横綱に求められる心・技・体のうち「心」の成長を追う。
中学時代の大の里
砂まみれになった中学1年の中村少年が、真っすぐ前を見て何度もぶつかってきた。胸を出したのは、現在もアマチュア相撲の日本代表で長く活躍する三輪隼斗さん(30)=ソディック。当時の目の輝きが忘れられない。稽古前に大の里がかけられた声が、故郷への思いの原点になっている。
三輪隼斗との出会い
三輪さんは石川県穴水町出身。石川から新潟県糸魚川市の能生中と海洋高、日体大という相撲留学の先駆者だ。小学6年の中村少年も見守った高校の全国大会(金沢)で海洋高の優勝を決めたのが、大将の三輪さんだった。「あの一番を見た影響は大きかったです」と大の里。最高の凱旋を目に焼き付け、新潟行きを決めた。
二人の共通点
少年時代でトップに立てなかったのが2人の共通点だ。現役では、幕内遠藤と十両輝が能登を出て金沢の中学に進んだのがエリートの証し。三輪さんが強調したいのは、故郷を捨てたわけじゃないこと。成長した姿を見せるために親元を離れ、歯を食いしばった。
大の里の成長
海洋高時代も指導した三輪さんは「大の里はずっと、納得いかない相撲だと勝っても天を仰いでました」と振り返る。変化を感じたのは春場所の優勝決定戦。高安得意の左四つでも前に出続けて賜杯をつかんだ。夏場所は終始、前を見据えて自信に満ちていたという。
故郷への思い
4月の石川県七尾市での巡業で再会し、横綱昇進後は「おめでとう」「ありがとうございます」と短い言葉を交わした。同じ苦労を知るから、言葉は少なくても思いは同じ。大の里が石川を「相撲どころ」「相撲王国」と表現してくれるのが、第一線に立ち続ける三輪さんにとっても力になる。「故郷への思いを忘れず、子供たちのお手本になってほしい」と願っている。
大の里から三輪隼斗へのメッセージ
「三輪先輩のようになりたい」と金沢の大会の一番を見て、背中を追いかけて新潟に行きました。今は忙しいですが、また時間を見つけて一緒に食事をして、いろいろな話をするのが楽しみ。今もお世話になっている大事な先輩。今後も三輪先輩にいい刺激を送れるように、世界大会の糧になるように僕も頑張っていきたいと思います。